✒️ ロングコロナの「脳のつながり」を断ち切る神経炎症:PETとMRIの同時計測で解明
発表日: 2026年4月23日
なぜこの研究が重要なのか?
ロングコロナの「ブレインフォグ(脳霧)」や「ひどい疲労」の原因として、脳内での慢性炎症(神経炎症)が疑われてきました。しかし、これまでの研究では「炎症があること」と「症状があること」の関連は示されても、それが脳の情報伝達ネットワークにどのような物理的なダメージを与えているかは不明でした。
本研究は、神経炎症を可視化する「TSPO PET」と、脳のネットワークのつながりを可視化する「安静時fMRI」を同一患者で同時に計測した世界初の本格的研究です。神経炎症が、単に炎症を起こしているだけでなく、脳の重要なネットワークの「つながり」を物理的に遮断していることを証明した点で極めて重要です。
主要な発見
1️⃣ 神経炎症が「注意」のネットワークを切断 TSPO PETで神経炎症が高いと判定された患者では、視覚周辺ネットワークと、注意を向けるために不可欠な「背側注意ネットワーク」の機能的コネクティビティが著しく低下していました。これは、脳内で炎症が起きている部位の情報伝達が物理的に阻害されていることを意味します。
2️⃣ 症状があると「デフォルトモード」が切断 慢性的な疲労や集中力の低下(神経認知症状)を訴える患者群では、視覚周辺ネットワークに加え、自己認識やエピソード記憶に関与する「デフォルトモードネットワーク」のコネクティビティが低下していました。アルツハイマー病などの神経変性疾患でも見られるパターンです。
3️⃣ 炎症×症状の最悪ループ:小脳の広範な破綻 最も衝撃的だったのが交互作用の解析です。神経認知症状がある患者において、神経炎症のマーカー値が高まるにつれて、小脳の広範な領域でコネクティビティが大きく低下することが判明しました。運動制御だけでなく認知にも関わる小脳が、炎症と症状のダブルパンチで深刻なダメージを受けています。
4️⃣ 視床と脳幹の「ハブ機能」の破綻 脳全体の信号を中継する視床と、自律神経の要である脳幹。視床と体性感覚ネットワークのつながりは主に「症状の有無」で変化し、脳幹とコントロールネットワークのつながりは主に「神経炎症の有無」で変化していました。つまり、症状と炎症は別々の経路で脳のインフラを破壊しているのです。
まとめ
この研究は、ロングコロナの神経症状が決して「気のせい」ではなく、神経炎症によって脳のネットワークが物理的に切断・弱体化していることに起因することを明確に示しました。特に、アルツハイマー病などで見られるデフォルトモードネットワークの低下が既に起きていることは、長期的な神経変性のリスクを示唆しており、早期の抗炎症・神経保護アプローチの重要性を痛烈に訴えています。
出典
Visser D, Pieperhoff L, Lorenzini L, et al. Decreased functional connectivity in post-COVID syndrome patients with high neuroinflammatory activity. NeuroImage. 2026;333:121951.