✒️コロナウイルスの進化方向はただ一つ「確率的外れ値の確実な収穫」 - このウイルスは極稀な事象を確実に収穫することで繁栄している
カジノのルーレットは、長く遊べば遊ぶほど胴元が勝つようにできています。0の存在が、確率の分布を非対称にするためです。
今日はXで、NSP15がRNAに毎秒数百万回衝突することで、確率論的にめくれ上がるウラシルを掴んでゼロ努力で引き剥がしていること。
また、スパイクプロテインのRBDは、露出しないとACE2と結合できないが、露出すると抗体から攻撃されるというトレードオフを解決するため、露出してるときとしていない時の状態遷移の途中の速度をアンバランスにすることでトレードオフを乗り越えている、ということを投稿しました。
この二つを知ってから、上述のカジノの仕組みが頭を離れません。
言い換えると、サバンナの肉食動物は、通常であれば草食動物に敵いません。そのため、草食動物が防御陣形に入った後は挑発や突発的な攻撃を繰り返すことで、幼体などの脆弱な個体が防衛陣から飛び出した瞬間を狙います。
ここから先は、私の仮説です。
SARS-CoV-2 の本当の強みは、新しい力学を発明することではなく、もともと分子が持っている希少状態を収穫することにあるのではないか。Nsp15 は、RNA が熱揺らぎで見せる一瞬の塩基フリップを収穫する。スパイクは、RBD が開口時に滞在する時間を調整して、受容体に出会う確率を収穫する。言い換えると、このウイルスは分子を押し切るより、低頻度で存在する既存の「マイクロ状態」を選び取り、その占有率や寿命を少しずつずらして勝っているのではないか。私はこれを、仮に “揺らぎの収穫” と呼びたいと思います。
今日の投稿群から分かるのは、このウイルスは感染の段階から自己複製まで、数億分の1の確率で発生する「マイクロ状態」を逃さないことを強みにしている。このウイルスが進化している方向は実はただ一つ。”確率分布の遠い端に存在する極稀な事象をいかに確実に利用するか”です。
この仮説が正しいなら、いくつか予測が立ちます。
ひとつは、Nsp15 の in vivo 切断ホットスポットは、単に U が多い場所だけでなく、bulge、wobble、局所的な breathing が起きやすい U に偏るはずだということです。もうひとつは、スパイク変異体の感染効率は、同じ受容体密度条件で比べると、平衡的な結合力より開口状態の滞在時間や開閉切り替え速度の方と強く相関するはずだということです。「このウイルスは、確率を食っている」。そう考えると、平均や平衡状態、中央値を焦点に当てた主流の解析方法では、このウイルスの本質を見逃すのかも知れない。これはまだ予測ですが、少なくとも今日の2本は、その方向へかなり強く指しています。
ミクロの確率論こそうちの分野
うちの研究は、一兆分の一秒単位で動く分子の確率論を支配することです。タンパク質の切れ端が、望ましい方向に振れるのは何分の一なのか。それを80%増やすには、どこに追加の分子を結合させたら良いのか。ここまで来ると、ほとんど数学の世界。コロナウイルスも、同じ世界で動いています。最新のVDAC1研究、レポート配信中のミトコンドリア修復(融合)レポートなど、詳細はサイトからご覧になってみてください。