✒️ 🧬 コロナの「急性期」と「回復期」で逆転する——血液中の銅と亜鉛の比率
コロナにかかった後、血液中の「銅(Cu)」と「亜鉛(Zn)」のバランスが崩れることが分かりました。しかも、感染した直後と回復期とでは、そのバランスの崩れ方が正反対になるという驚くべき結果が出ました。
🔬 何をしたか
- コロナ感染者77人の血液サンプルを解析
- 血清中の「亜鉛(Zn)」と「銅(Cu)」の濃度、および「Cu/Zn比」を測定
- 2つのタイミングで採血し、重症化やロングコロナとの関連を調べた:
- 急性期(症状が出てから1〜14日後:52人)
- 回復期(症状が出てから3〜10週間後:38人)
Cu/Zn比って何?
体内の「銅」と「亜鉛」のバランスを示す数値です。この2つのミネラルは互いに拮抗し、どちらかが多すぎるともう一方の吸収を阻害します。このバランスは、体内の炎症や免疫の状態を反映する重要なマーカーとして知られています。
🎯 何が分かったか
① 急性期:Cu/Zn比が「高い」と重症化しやすい
- 感染直後(1〜14日後)の血液検査で、Zn濃度が低く、Cu/Zn比が高いと、コロナの重症化リスクが有意に高まりました。
- 炎症が起きると、体内の亜鉛は組織の方へ移動してしまうため、血液中の亜鉛が減り、相対的に銅の比率が上がる(=Cu/Zn比が高くなる)と考えられています。
② 回復期:Cu/Zn比が「低い」とロングコロナになりやすい
- 感染後3〜10週間の血液検査では、逆にCu/Zn比が低い人ほど、ロングコロナ(後遺症)を発症するリスクが有意に高まりました。
- 急性期のCu/Zn比と、回復期のCu/Zn比にはほとんど相関がありませんでした。つまり、急性期にバランスが崩れた人がそのまま後遺症になるわけではなく、回復期に入ってから「新たにバランスが逆転して崩れる」人が現れるのです。
③ なぜ回復期に銅が減るのか?
なぜ回復期にCu/Zn比が下がる(銅が足りなくなる)のか、正確な理由はまだ分かりません。しかし、以下の可能性が推測されています:
- コロナウイルスが腸に感染し、消化管からのミネラル吸収障害が起きる
- 亜鉛のサプリメントを過剰に摂取すると、腸で銅の吸収が阻害され、銅欠乏になる
- 銅が欠乏すると、免疫細胞(単球・好中球・T細胞)の働きが低下し、疲劳や息切れなどの症状が長引く可能性がある
💡 何を意味するか
「コロナの時期」によって、身体のミネラルバランスの意味が変わる
- 急性期は「亜鉛不足(炎症のサイン)」が重症化のサイン
- 回復期は「銅不足(免疫の機能低下)」がロングコロナのサイン
- 単に「ミネラルが足りない」と一括りにできず、時期によって必要なミネラルが違う
「亜鉛をとれば治る」は危険かもしれない
- 亜鉛にはウイルスの増殖を抑える作用があり、急性期の重症化予防には有効な可能性があります
- しかし、回復期に過剰に亜鉛をとると、銅の吸収を阻害してCu/Zn比を下げてしまい、逆にロングコロナを引き起こすリスクがあります
- 「亜鉛は多い方がいい」という単純な話ではない、というのがこの研究の重要な警告です
ロングコロナの新しい血液マーカーになる可能性
- 現在、ロングコロナを予測する信頼できる血液マーカーはありません
- 3〜10週間の時点でのCu/Zn比は、ロングコロナの発症を予測するシンプルで有用なマーカーになるかもしれません
⚠️ 注意点
- サンプルサイズが小さい(77人)ため、厳密なカットオフ値(何を超えると危険か)は定められていません
- 患者の食事内容やサプリメントの使用歴、ワクチン接種歴などのデータが不足しており、これらが結果に影響した可能性は排除できません
- 観察研究であり、「Cu/Zn比の異常がロングコロナの原因である」という因果関係までは証明できていません
- 血清サンプルを熱処理して測定しているため、熱処理が微量金属の測定に与える影響を完全には否定できていません
🧩 一言で言うと
コロナ感染直後は「銅に対して亜鉛が少ない状態(高Cu/Zn比)」だと重症化しやすく、3〜10週間後の回復期には逆に「亜鉛に対して銅が少ない状態(低Cu/Zn比)」だとロングコロナになりやすい。回復期に亜鉛のサプリメントを過剰に飲むと、かえって銅を欠乏させ、後遺症を引き起こすリスクを高めるかもしれない。
「亜鉛をとれば治る」ではなく、時期によって必要なミネラルのバランスが変わる——それが、この研究が描き出した新しい像です。
📄 論文情報
- タイトル: Serum Cu/Zn ratio is significantly associated with long COVID
- 著者: Mizuki Takayasu, Tatsuya Nagano, Sae Shinomiya, et al.
- 掲載誌: Scientific Reports (2026年)
- DOI: 10.1038/s41598-026-70221-1