カバヤキこーひーるーむ

✒️コロナウイルスはカオスの使者。細胞膜に最も刺さりやすい角度を探索するため、一部のスパイクプロテインだけをユラユラさせつつ他のスパイクで支える中間体を形成する

いやあ、コロナウイルスのスパイクプロテイン、私たちが思ってたのより遥かに、圧倒的に緻密な動作をしてるのかも知れないです。 従来、細胞膜上のACE2に取りついたあと、細胞自身のプロテアーゼがスパイクを引っ掻き、それで出てくる爪が、細胞膜の地肌にアンカーして、ウイルスを固定する、と思われてきましたが、これ、単純に爪が出てくるだけではなく、もっともの凄い仕組みを起動するということが分かってきました。

今日、Xでは、スパイクプロテインは三本の矢のように三本が束になって支え合っているということを書きました。しかし、実はこの三本、イコールではないんです。

この引っ掻く動作がきっかけとなり、三本のうちの一本だけが不安定化して、「中間体」というものを作ります。他の二本が固形化して安定してる中で、この一本だけがぐにゃぐにゃ動く状態になります。Xの方で、緻密に完璧に設計されている、と書きましたが、この中間体では一つだけがカオスになっているイメージです。

これにより、動く一本が細胞膜に一番刺さりやすい角度を探索します。そして残りの二体がこれに追従して、バネのような力で一気にジャッキを締めて、テコの原理でウイルスと細胞膜を引き寄せる働きをします。

つまり、順を追うとこうです。

1)ウイルス膜状のコレステロールが凝集する作用を利用して、スパイクプロテインがより集まる

2)より集まったスパイクプロテインの一つが、細胞膜上のACE2に触れると、他のスパイクプロテインも群として一斉にACE2に捕まる

3)ACE2の近傍のプロテアーゼを利用して、スパイクプロテインの一部を引っかかせると、MBPという爪が出てくる

4)これと同時に、スパイクプロテイン三本組みのうちの一つだけがゆらゆらと揺れ始め、細胞膜に一番刺さりやすい角度を探索する

5)角度が決定した瞬間、「ゆらゆら」していた一本がカチリと噛み合う。それを合図に、安定していた二本がバネのような力で「ジャッキ」を一気に締め上げる。テコの原理でウイルスと細胞膜を強引に引き合わせ、細胞膜にクレーター状の穴を穿(うが)つ。

6)クレーターの底からウイルスが細胞に融合を始める

こんな感じです。まさにカオスの使者。カオスと秩序を完璧に使い分け、カオス側に「探索作業」を行わせている構図です。ほとんど宇宙的な深みを感じます。


Shi, W., Jonaid, G., Kibria, M.G. et al. Effect of the S2’ site cleavage on SARS-CoV-2 spike. Nat Commun 16, 11675 (2025). https://doi.org/10.1038/s41467-025-66693-w


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